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妄想垂れ流し。 SS駄目な人は注意してね。 基本的にエロパロ版のゆゆこスレで投下したのを載せてます。
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・竜児 大河 櫛枝 川嶋 
・サプライズ
 

受験を控えた高校三年生の夏休みの午前。竜児は持ち前の凶悪な三白眼を細めてベランダにいた。
別に、次に道を通った通行人を無差別にどんなひどい手段で殺そうか、などと考えているわけではない。
ただ新発売のちょっとお高い漂白剤で洗った洗濯物が、すごく真っ白になったのが嬉しいだけなのだ。

「今日もいい天気だな……なんかいいことでもありそうだ」
それにしても最近は向かいのデカいマンション様のおかげで本当に日当たりが悪くなった。
これじゃあ乾くものも乾かないよな、いい加減に乾燥機買うか、大河の家で借りるだけでいいかどうしような。
ビチョビチョのシャツを片手に、そんないかにも主婦的なことを考えていると、大河の家の窓が唐突に開いた。
そしてそこには手乗りタイガーこと竜児の彼女、逢坂大河がいた。

「おう大河、おはよう」
「……おはよ」
お人形みたいな可愛い容姿で、だけど中身は凶暴で。
自分は本当にこいつと付き合ってるんだよなあ、と考えて竜児は少しにやけてしまった。これは思い出し笑いだ。
二人で逃げだしたあのバレンタインからもう半年か。
散々周りを心配させたし、泰子と喧嘩もしたけれど、今はバイトをしながら大学に行く、というので和解して落ち着いた。
それにしてもあの夜の大河は本当に笑えた、だって
『わ……私はね、…アンタが、高須竜児が………すきゅ!』
噛んだのだ。一番いいところで。
さすがドジの大河だ、と笑いながら大河を抱きしめた。
そうしていつかと同じように星座を指差しあいながら、二人で歩く未来を語り合った。

「なに人の顔見て笑ってんのよ。その顔面凶器で笑われると鳥肌が立つ」
「おう、なんでもねえよ」
一人思索にふけっていた竜児を不審に思ったのだろう、大河はしかめ面だった。
まあ見せてくれる顔の8割がしかめ面だから、いまさら不満は無いのだが。
しかしそれを抜きにしても、今日の大河の様子は少し変だった。どことなく不安そうな顔。

「どうした大河、なんか変なもの食ったか?朝食食えるか?」
「アンタは私の体調を食欲で測ってんのか」
正直そのとおりだ。こいつは食こそ命!と言っても過言ではない奴だ。
でも正直に言うと後でボコられるので黙っておく。
……自覚は無いが、こんな情け無い自分を、尻に敷かれてると言うのだろうか。

「まあいいわ。ねえ竜児、あのね、その、……んー」
そのまま「んー」と思案顔で悩む大河。
こいつがこんなにハッキリしないのなんて珍しい、よほど言いづらいことなのだろうか。
「なんだよ、なんか言いたいことあるのか?なんでも言ってみろ、ちゃんと聞いてやるから」
「んーとね、あのね。……できちゃったみたい」

……できちゃった?
最近はまっていたぷよ○よのベリーハードでもクリアできちゃったんだろうか。
それとも48の殺人技の抜け出し方でも編み出せたというのか。それはすごい。

どこまでも鈍い竜児も、次の大河の一言でやっとすべてを理解したのだった。


「赤ちゃん、出来ちゃったみたい」


***

「うぉぉぉぉおお……」
高須竜児、17歳。高校三年生。只今近所のファミレスで人生最大の窮地に陥っています。

「うっさいわね。アンタ少しは黙れないの?」
それにしても隣の席にいるこいつはなぜこんな平然としているんだ。
妊娠といえば一番負担がかかるのは女性の体じゃないか。
「お前だって少しは考えろよ!これからのこととか心配じゃないのかよ!?」
「さして心配じゃないわ」
「なんでだよ!?」
ジュー、と牛乳をすする大河。どうでもいいけどフリードリンクに牛乳置いているのなんてここくらいじゃないだろうか。

「私は竜児を信じてるから。竜児は絶対私を見捨てない。
 アンタと過ごす将来のイベントが少し早くきただけじゃない、何を心配しろってのよ?」
「……おう」
……それはずるい。大河、それはずるいぞ。そこまで言われて嬉しくない男はいない。
好きな女にここまで信頼されるなんて、まさに男冥利に尽きるだろう。幸せすぎる。
だが、もちろん大河のことを見捨てようなんてホコリほど考えてもいないが今はそうではなくて。

「学校のこととかよ、今はまだいいけどお腹だってデカくなってくるんだろ?
 それに不本意だがお前の親にも報告しなくちゃならん。課題は山積みだぞ」
「うちの親なんかどうでもいいって。……お、みのりーん!ばかちー!こっちこっちー」
竜児が振り返ってみると、ファミレスの入り口にはお馴染みの二人がいた。
そう、情け無い話だが自分ひとりではどうにもならないので、内容は伏せて二人を助けとしてを呼んだのだ。
大河の話を聞くと、生理が遅れているだけなので妊娠している確証はないらしい。
そこらへんの女体の神秘についても女性陣に聞いておきたかった。
櫛枝と大河のことを話すのは未だに多少のためらいがあったが、大河が一言「みのりんはそんな弱くない」と言ってのけ解決。

「おっまたせー大河!高須くん!」
「まったく、急に何なのよ。あたし今日は仕事あるからノロケ話なら短めにしてよねー」
「突然ですが、私妊娠しました!」

「「……」」
大河、それ言い出すの早すぎるって……。あまりにも突飛な告白に完全に固まっている二人。
やがてゆっくりと首だけ動かして…ああやっぱり。こちらをものすごく強張った顔で睨んできていた。

「高須くん、これどういうことなのかな。
 このババに分かるように懇切丁寧に、ちゃんっっと一から説明してもらっていいかな」
「おう…あ、いや櫛枝、俺にも突然のことで何がなんだか……」
「あー……ついに一線を越えた訳ね。そして妊娠しちゃったと。
 高須くん、まさかとは思うけど近藤さん使わなかったとかはないよね」
「……」
使った、と言ったら嘘になるので何も言えなかった。
二週間ほど前。
夜ご飯を食べた後、成り行きで大河と肌を重ねることになり、準備もしてなかった竜児は近藤さんを用意していなかった。
そうして事が終わったあとに心配になって、でも隣で安心して眠る大河を見て、今日まですっかり忘れていたのだ。

「……はあ。サイッテー。避妊くらいしろっつーの。救いようが無いわ」
「そこはいいのよ。竜児も私もいっぱいいっぱいでそんな余裕無かったし」
そう言ってのける大河に呆れる川嶋。櫛枝はずっとこちらを見ながら何かを考えているようだった。
「だからってアンタ……学校どうすんのよ」
「別に。言いたい奴には言わせておけばいいのよ」
「そんな問題かっつのー…。アホとらにはどうせおろすって選択肢も無いんでしょ」
「ああ無い無い」
ジュー、と牛乳にオレンジを混ぜたのを一気飲みする大河。
頑なな大河の様子に、何かを求めるようにこちらを見てきた川嶋だったが竜児も気持ちは大河と同じだった。
おろすなんて有り得ない、そう目で言いながら頷いてみせる。
それを見て諦めたのか、川嶋はため息をつきながら「あたし来た意味ないじゃん」とつぶやきながらコーヒーを飲んでいた。

「……高須くん」
「おう、なんだ?」
真剣な顔をした櫛枝。正直何を言われるか恐恐諤々だったが、内容は至ってシンプルだった。
「大河を悲しませたら許さないよ」

一年ほど前にも同じ事を言われた気がする。
あのときは大河を好きだとはまったく自覚も無くて、どう答えていいのかわからなかったけど。
今ならハッキリと言える。

「おう。絶対にそんなことはしねえ」
離れないと決めたのだ。守ると決めたのだ。
櫛枝のおかげでそんな簡単なことを思い出した。
なにも迷うことはなかった。誰になんと言われようと大河とならやっていける。
思えば随分と小さなことで悩んでいたものだ。学校の奴らになんと言われようと、近所で噂になろうとささいなことだ。
よく目を見開いてみろ高須竜児。目の前に居る大河は、こんなにも幸せそうじゃないか。
それだけで自分には十分なことに思える。二人、一緒に居るだけで幸せなんだ。

「それじゃあ産婦人科を探そうじゃないか」
櫛枝は満足そうにうなずき、なぜか持っていた地図を広げるのだった。

***

「ねえ竜児、子供の名前どうしよっか」
夕暮れの病院からの帰り道。どうやら妊娠していることは確定したらしかった。
それでも動揺しなかったのは、ひとえに大河と一緒に居たおかげだ。

「そうだな、女の子なら可愛い名前にしてやりてえな」
「可愛くない名前で悪かったわねえ」
ふくれっ面になる大河。それを見て笑ってしまう。
「別にそういう意味じゃねえよ。俺はお前の名前が好きだぞ」
「名前だけなんだ?あー可哀相な私」
ほらやっぱり大河はずるいのだ。
もちろんそうじゃないと分かっているくせに。

「……そんな訳ねえだろ。俺は、お前の全部が好きだ」

へ・へ・へ、うんうん。と顔を赤くして満足そうな大河。
気持ちを正直に言うのは恥ずかしいが、こういう大河を見れるならまんざらでもない。

「竜児」
「おう」
「好き」
「……おう」
そうして手を繋ぐ。
それだけで二人は赤くなってしまうのだったが、それでいいと思う。これが自分たちなのだ。


――竜虎は並び立った。
そして、歩を同じくして歩き出したのだ。

大河とならどこまでも歩いていける。
竜児とならどこまでも歩いていける。

口には出さないが、二人とも同じ思いを抱きながら。

 

 

end

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プロフィール
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性別:
男性
趣味:
とらドラのSS書き
自己紹介:
大河超可愛すぎ

竜児と大河に幸あれ

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