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・竜児 大河
・短いからってやっつけとか言っちゃダメ
「私はね、月なのよ」
夜ご飯も食べ終わって泰子が仕事に行くのを見送り、二人でのんびりとしているとき、大河が不意にそんなことをつぶやいた。
突然のそんな発言に竜児はついていくことができず、ただ「……はあ?」と返すことしかできなかったが。
「誰よりも輝いてるけど、ホントは一人ぼっち。星達が仲良く輝いてても仲良くなれないの。
『なんでだろう、仲良くしたい』って思ってもね、もうダメなのよ。変な意地張っちゃってさ。
そのうち『仲良くなんかしたくない、私には関係ない世界だ』って勝手に決め込んで自分の世界に閉じこもっちゃう。
月って夜の異端児じゃない、なんか私みたい」
自分を孤独な月と例える大河。
こいつは櫛枝や川嶋がいてもまだ孤独を感じるんだろうか。こいつの孤独はどれほど深いのだろう、と竜児は思った。
だから少しでもその心を、その考えを除いてやりたかった。俺もここにいつぞ、と。
「……いや、月は俺だな。おう、間違いない」
「…あんたは月じゃないわよ、あんなに冷たくない。優しい人間よ」
「違うんだ、そういう意味じゃなくてな。だって月は地球の重力にに振り回されて回ってるだろ?
いつも振り回すお前が地球、振り回されてる俺が月。ぴったりじゃねえか」
「……」
しかめっ面で急に黙り込む大河。
この不機嫌そうな顔はよく見るあの顔だ、間違いない。
この顔をしたあとの大河のセリフは大体決まっているのだ。
そう、それは大抵するどく、
「くさっ。なにそれ、あんた詩人気取り?」
間単に竜児の心をえぐる様な言葉ばかりなのだ。
「お、お前から自分を月に例えてたくせに……」
***
竜児はコタツに足を突っ込んだまま、「もういい、なんとでも言え」と寝転がってしまった。
ふてくされたのだろうか、でもやっぱりさっきのセリフはくさかったわよねえ……と大河はひとりごちる。
やっぱり、自分は月なんだろうと思う。
竜児がいるから、竜児という地球があるから回ってられるのだ。
この暗い暗い宇宙を、広い広い世界を、竜児が支えてくれていると分かってるから自由に回っていられるのだ。
ありがとう、好きだよ竜児。
胸に秘めたその言葉を語ることもなく、今日も夜は更けていった。
end